Perfume 翻訳物置き場

自分が翻訳した、Perfume に関する記事の翻訳を置いていきます。意訳も多いので、誤訳等ありましてもご容赦下さい。

Paper Magazine記事翻訳

Paper Magazineの「Future Pop」静岡公演のライブレポ&インタビュー記事の翻訳です。

原文URL↓

www.papermag.com

 

―以下翻訳―

 

Perfumeこそが、J-POPの世界的なミライ

 

 暖かな10月の夕方、私は静岡の室内競技場の真っ暗なプレス席(静岡:東京から電車で一時間半位のところにある、比較的静かな沿岸都市)に座っている。

 私の周りや一階の観客席にいるのはお洒落な20代の女性達や、スーツとPerfumeグッズを着こなしている40位のサラリーマン達。多分こちらでのライブの習わし的なものだと思うが、携帯電話の電源を切り、うちわや手作りのポスターを掲げている。

 私と同様に、他の観客たちも辛抱強く日本で最も人気のあるの音楽グループを待ち続けている。時折、姿なき声が会場の隅から響く。

 「のっちー!」と叫ぶ女性、「あ~ちゃーん!」と叫び返す男性、別の声は「かしゆかー!」と響き渡る。

 観客たちがメンバー一人一人の名前を叫ぶライブ前の痺れるコール&レスポンス、ライブを見に私達をここまで連れてきたグループ、Perfumeの。

 

 それからすぐに会場は暗くなり、スタジアム内をレーザーがネオンの流星のように、頭がおかしい位飛び交い始める。スピーカーから音楽が流れ始める。近未来的な怪物のようなビートはまるで会場のてっぺんにエイリアンの宇宙船が着地したかの如く鳴り響き、ステージ背後の巨大LEDスクリーンには、3人の輪郭をかたどった巨大なプロジェクション画像が投影される。

 ステージのフロアが開いていき、一人ずつ、あ~ちゃん(29)、のっち(30)、かしゆか(30)の3人がアリーナの下から登ってくる。アンドロイドのようなポーズを取り、金属製の舞台で出来た高い舞台装置の上で静止している。

 そこからの2時間強にわたり、Perfumeは気分爽快なEDMの爆音と煌めくようなダンスポップシングルのドキドキするようなセットを繰り広げてくれた。その過程で彼女たちが魅せてくれる革新的な視覚効果のパフォーマンスに、私の心はブッ飛んだ。

 

ホログラムが踊る!マッピング!シンクロした影のプロジェクション!振付と後ろのスクリーンがシームレスに繋がる!

あ、レーザーの話したっけ?

 

 完全に心を持っていかれました。正にあれこそが、ポップの未来だった。

 

 3月30日、Perfumeは静岡から離れた世界で、正確には6,812マイル離れたマンハッタン、ミッドタウンの「Hammerstein Ballroom」でライブを開催する。

 最新のワールドツアーをニューヨークでスタートさせた後、3人はアメリカの5つの年をこの春で廻り(シカゴ、ダラス、シアトル、サンノゼ、ロサンゼルス)、その後カリフォルニア州インディオで開催される「Coachella Music & Arts Festival」に出演する最初の女性J-POPグループ、という名声を得ることになる。

 期待値も高いこのフェスティバルでのライブは、欧米諸国におけるJ-POPのターニングポイントとなると同時に、アジア地域の音楽シーンではすでに旋風を巻きを越しているPerfumeにとっても、世界的なキャリアの一つの到達点となるだろう。

 これはPerfumeにとってだけでなく、もっと大きく言えばアメリカの音楽シーンにおけるアジアの知名度の面でもとても大きな出来事だ。Perfumeが出演する今年のフェスには、韓国で最も急成長を遂げたグループの一つであるBLACKPINKも、このフェスに参加する史上初のK-POP女性グループとしてラインナップに名を連ねている。

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 Perfumeの煌めく「Future Pop」(偶然にも去年8月にリリースされたアルバムと同じ名前である)のサウンドは、確かに表面的には前向きな、未来を見つめるものの様に感じる。だがその中心で脈打つのは、かつての「期待されない噛ませ」であった過去とも強固な絆を育み、もしかすると自身の未来についてと同じぐらい誇りを持つ心である。

 2002年にリリースされた、西脇綾香(あ~ちゃん)、樫野有香かしゆか)、大本彩乃(のっち)の3人のPerfumeとしてのデビューは、ブリブリでポルカ調のインディーシングル「OMAJINAI☆ペロリ」だった。次の年、広島のタレント養成所の生徒同士で2000年代初頭に結成されたこのグループは上京し、自身のエレクトログループ「Capsule」でよく知られる多作の音楽プロデューサー、中田ヤスタカと出会う。

 そこからの数年、グループは渋谷系と呼ばれる、90年代後半に東京、渋谷で人気のあったキッチュでレトロ風なサウンドをリリースし続けた。体を揺らすビットポップ風のシングル、「スウィートドーナッツ」や「モノクロームエフェクト」はインディー界隈でこそ評判となったが、音質的な一貫性に欠ける一連のリリースもあって、商業的な成功は掴めずにいた。

(*訳者注:音質的なの原語は「sonically」で「音質的、音響的」を意味します。次の文章の繋がりを見ても、記者の方が考える「近未来的」Perfumeとインディーズ時代のレトロ風のイメージが一貫していない、という意味で「音楽的な一貫性を欠いていた」という意味の文章なのかな?とも捉えられますが、取り敢えず原文通りに訳してみました。)

 数年間に渡ってインディーシーンから抜けだそうと苦闘した後、2008年までにグループのスタイルはより洗練され、はっきりとエレクトロで、疑う余地もなく近未来的なものになった。中田ヤスタカが舵を取り、Perfumeは自身の代名詞となるサウンドとスタイルを発見し、商業的なブレイクを迎えた。

 そしてその夏、Perfumeは7枚目のシングル「ポリリズム」をリリース。この光り輝くシンセポップの名曲が、日本最大の放送局であるNHKのキャンペーンソングに起用されたことで、彼女たちの名は明確にJ-POPの地図に記された。

 ポリリズムは日本のオリコンチャート(米国でいうビルボードのようなもの)のトップ10入りを果たし、数か月後にリリースされた初のスタジオアルバム「GAME」で初の1位を獲得した。

(*訳者注:ポリリズム発売は2007年9月、GAME発売は2008年4月なので、記者の勘違いだと思われます。)

 5作品でチャート1位を獲得、何回かのワールドツアー、自身のファッションブランド、OK GoのMVへのカメオ出演(マジで)…。3人には輝くメロディーのテクノポップや、現実離れしたオートチューンやヴォコーダーへの愛以外にも沢山のものがある。

 この10年以上、Perfumeは海外においてその艶やかなヴィジュアルとハイテク技術(全てを日本のヴィジュアルアートとメディアを手掛けるRhizomatiksが作成)、キッチリとしたファッション、印象的なダンスの振り(長年の協力者であるMIKIKO先生に敬礼)で名声を博してきた。母国日本においては、3人は現代のスーパースターであり、お洒落な街原宿のビルには彼女たちの顔が張り付けられ、オトナの街六本木のデパートでは彼女たちの曲がかかっている。

 

 もしかすると一番大きなPerfumeの成功の秘訣は、彼女たちの性格から来るここのキャラクターかも知れない。これにより彼女たちは日本の他の交代制アイドルグループとは一味違う存在となっている。

(*訳者注:「交代制(rotational)」はメンバーが多数いてポジションが変わることなのか、卒業等で入れ替わっていくことなのか不明だったので、直訳です)

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 真の意味で、どんな人にでもお気に入りのPerfumeがいるのだ。

 

・明るくて楽しいあ~ちゃんはグループの非公式なリーダーを務めルメンバーで、トレードマークのポニーテールも彼女のおふざけ好きな性格にお似合い。

・優しくエレガントなかしゆかは、ストレートのロングヘアで日本の伝統工芸品好き。

・そして落ち着きがありながらも尖ったのっちは、何もしなくてもクールでいられる、有名な(東京の美容院に入って「のっちで」っていえば通じるくらい)ボブカットの持ち主。

 

 満員のコンサート後に控室で3人と会った時、とても驚かされたのは彼女たちが元気一杯だったこと。何時間も文字通りノンストップで踊り続けたあとだというのにだ、しかもヒールで!さらに驚かされたのが、今日見せてくれた振付の大部分が、最近習ったばかりのものだったということ。

 「(Future Popみたいな)フューチャーベース系の音楽をやり始めた時、最初はどうやってテンポを取ったらいいのか分からなかったんです。MIKIKO先生が振りを付けてくれた後でも、よく分からなかったですね。今まで踊ってきたダンスとリズムが違ったので」と通訳のアヤさんを通じてあ~ちゃんは話してくれた。

  そこにかしゆかが会話に加わってくる。

 「Future Popの振り付けが凄く楽しみだったんです。曲をもらった後、先生がどういう振付を付けるんだろう?って想像しようとしてました」

 

 私が「ステージ上で”If You Wanna”をパフォーマンスしている時の3人がお互いにお互いを補い合っているように見えました。まるである種の「Fusion(最新アルバムに収録された曲名の一つ)を作り出してるかのように感じたんです」と意見を述べた時、かしゆかは驚きを隠せない様子だった。

 「え?そう言って下さるってことは、ウチらのダンスがシンクロしてるってのを分かってくれてるからですよね?凄く面白いです。スクールにいた時から、一緒に歌えば歌おうと思うほど、自分たちの個性が出てきちゃう気がしてたんです」とかしゆか

youtu.be

  素晴らしい香水(Perfume)が、幅広く、かつ調和がとれた成分のケミストリーで成り立つように、このグループもその各々の香りの単純な集合体よりも、真に素晴らしい存在となっている。

 のっち、かしゆか、あ~ちゃんの3人が高音域で、裏側を支えるスタッフ達やマネージメントチームが低音域、その上でプロデューサーの中田ヤスタカが中音域の役割を果たし、Perfumeというプロジェクトを、自身が作り出すテクノロジー偏重型の音楽と20年以上にわたって認められてきた楽曲制作の才能でまとめ上げているのだ。

 

 「基本的には中田さんに求められてるものを出そうとしてます」のっちはこの「音楽職人」との楽曲制作についてこう語る。

 「私達が(どのアルバムを作るときにでも)一番最初にもらうデモって物凄くシンプルなんですよ。私達が歌入れをした後で、中田さんが曲を完成させるんです。中田さん的には私達の声って最終的に中田さんが創る音楽にくっ付ける音楽の構成要素みたいなもので、音楽の一部で完成品の一要素なんだと思います。私達も中田さんとはいい距離感を保つようにしてます、それは私達自身が中田さんの超ファンだからだと思うんですけど。距離感があるおかげで、音楽を常に新鮮に感じられてる気がします」

  アートワークとコラボレーションが出来る歌、パフォーマンス、PVを含めたパッケージ全体の、この完成品のレベルの高さこそが、Perfumeの国内、海外においてPerfumeが抗いがたい魅力を放つ理由である。

 彼女たち自身もツアーの為に欧米に訪れた際、観客の(特にアメリカのファン達の)熱狂を身をもって感じたという。

 「海外のお客さんって、感情を凄く大きく表現してくれるんです」と、あ~ちゃんはその経験を語ってくれた。

 「日本だと、礼儀正しくいるのってチーム戦みたいなところがあって、みんな周りを見て楽しんでるかな~?とかみんなに礼儀正しくしなきゃ、ってなるんですけど、海外のお客さんって、愛をステージに届けようっていう熱が凄くて。それで物凄く正直なんです。曲を知らなかったら、「知らねーよ!」ってなるし、知ってたら一緒に歌ってくれます」

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 テクノロジーは勿論、PerfumeというJ-POPグループを世界が変わらず「こいつら何なの?ヤバいんですけど…」と感じてしまう一端を担っている。ドローンからAIまで、Perfumeはテクノロジー界隈の最先端の分野と触れ合い、忘れがたい、パフォーマンスを増強するような視覚効果を届けてきた。昨年11月には、Perfumeはバキバキ系の曲「Fusion」で心が砕ける様なパフォーマンスを魅せてくれた。最先端の電話通信企業であるドコモとチームを組み、「FUTURE-EXPERIMENT VOL. 01」として、3人が世界中の異なる都市で同時にダンスを繰り広げた。

 あ~ちゃんは東京、のっちはニューヨーク、かしゆかはロンドン。全く同じ時間にパフォーマンスを行い、最新の配信技術を使ってシームレスに3人を繋ぎ合わせた素晴らしいライブだった。3人のパフォーマーにとっても、テクノロジーは日々の生活に組み込まれたものだそうだ。ライブ以外においても。

 「携帯なかったら生きてけないと思います」と笑いながらかしゆかは言う。

 「起きたらすぐ携帯チェックして、寝る直前まで一緒です。最近のアプリでどれだけ携帯使ってるかが分かるアプリがあるんですけど、それによると先週は、ソーシャルメディアを見てた時間が24時間、アプリのゲームをしてたのが22時間だったんです!」(現在のお気に入りゲーム、アニメから始まったARゲームアプリ「妖怪ウォッチランド」を見せてくれながら)

 ある種の人々は未来について機械的ディストピアになるのでは?と懐疑的に見ているのかもしれないが、Perfumeはより希望的に、「Future POP」で映像化されたようなユートピア(理想郷)が待っていると想像している。AR化されたクラブ、綺麗な街並みが自動で作られる、VRショッピング、「宇宙家族ジェットソン」のような自動化された家電、自動運転の自動車。

(*訳者注:宇宙家族ジェットソン↓)

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 アルバム「Future Pop」では、「Tokyo Gril」や「無限未来」等の楽曲で、理想的な未来や臆面もない位の前向きさを歌ってくれていた。

 だがしかし、「未来」とはPerfumeにとって何なのだろうか?

 Perfumeにそれを訊ねてみると、彼女たちの思い描く未来はテクノロジーよりも人間味に溢れる世の中だった。

 

 「EメールとかSkypeとかソーシャルメディアとか、みんな顔を合わせたり実際に合わなくても繋がれる世の中になったじゃないですか!?でも、時には同じ場所にいて直接コミュニケーションを取るのって大事だと思うんです。例えば記者さんは今日わざわざ静岡まで私たちに会いに来てくれたじゃないですか!?それって素晴らしいと思うんです」と、のっち。

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 「世の中が色々便利になって、昔思い描いていた未来が来たな!?って思います、でもそうなっても、そのおかげで生身の人間的なものが大事だなって思えると思うんです」とかしゆか

  「例えば、私たちのパフォーマンスって、むっちゃハイテクに見えると思うんですけど、プログラムをしてるのは人なんですよ!そういう裏側にいる人力みたいのが大好きなんです。今日のライブだと200~300人ぐらいのスタッフさんがいるんじゃないかな?」

  「思うんですけど、自分を信じて自分がが感じたことに対して声を上げれて、でも同時に他の人たちへの配慮も出来れば、それって理想の世界じゃん?って思うんです」と、あ~ちゃんは微笑みながら頷く。

 「年齢とか、性別とか関係ない、レッテルを張られない世界っていうのが理想の世界ですね」

 

 20年以上に渡って、日本において音楽的にも視覚的にも最も素晴らしく予想もつかないようなもの(音楽的にもヴィジュアル的にも)を量産し続けてきたPerfumeだが、その真実は一つ。

 

 Perfumeの未来は、あ~ちゃん、のっち、かしゆかが重ねた手の上にある、という事だ。

 

-翻訳以上-

 

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