THE VERGE 記事翻訳
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日本で最も未来的なポップグループ、Perfumeの舞台裏
「Future Pop」ツアーはテクノロジーとダンスの眩いばかりの衝突
記:Sam Byford 3/29 7:10
Perfumeはそのスタイリッシュかつ近未来的なイメージと、それに裏打ちされた特徴的なエレクトロ・ポップサウンドで、日本において10年以上最も人目につきかつセールスを上げ続けているアーティストだ。
しかし3人の「音楽」面でのアウトプットは、等式の片一方に過ぎない。Perfumeのライブはテクノロジーとダンスの眩いばかりの衝突で、広大なアリーナをSF的なおとぎの国に変えてしまう。
そんなPerfumeの「Future Pop」ワールド・ツアーが明日、ニューヨークのHammerstein Ballroomでのライブからスタートする。去年の12月に行われた横浜でのライブに参加してメンバーを取材し、さらにはライブ演出の裏側にいる「中の人」にも取材し、Perfumeのテクノロジーとポップカルチャーの融合の裏側にあるものに迫った。
Perfumeは広島のタレント養成所で2000年頃に結成された。だがグループの人気が急上昇したのは2008年、近年のJ-POP史でも最も影響力の強いアルバムの1つである「GAME」のリリースだろう。プロデューサーの中田ヤスタカは自身のグループ、Capsuleの渋谷系に影響を受けたエレクトロニカをベースに、革新的な一連のテクノポップ楽曲を生み出し、Perfumeは世界的なEDMブームに先駆けて突出した人気を誇るようになった。そういった意味でも中田ヤスタカのエレクトロ作品と近未来的なイメージは相性がいいと言える。
「若かったころはディーヴァ的な歌い方を練習してたんです」と語るのは西脇綾香(あ~ちゃん)。
「でも中田さんと初めて会って、エレクトロの曲をやり始めた時に、エレクトロにロボット的なイメージがあって、そこから繋がっていった感じです」と大本彩乃(のっち)が付け加える。
「ファンの皆とのつながりは常に感じています。でもテクノロジーを使うことで、より近くに感じられるんです」
初期のシングル「ポリリズム」等の最小限の映像(訳者注:ACのCMのことだと思われる)が基礎となり、PanasonicやNHK、NTT Docomoといった企業との注目を浴びたコラボレーションが後に続いた。
「ファンの皆とのつながりは常に感じています。でもテクノロジーを使うことで、より近くに感じられるんです」と樫野有香(かしゆか)は語る。
「例えば、ツイッターから送られたメッセージを3D映像の一部としてステージ上で見せたりとか。ファンの皆がテクノロジーを通して私たちのライブを体験出来るようになったり」とあ~ちゃんが付け加える。「テクノロジーがPerfumeの特徴ってわけじゃないんですけど、そういうテクノロジーが存在するなら最大限活用したいのがPerfumeなんです」
彼女たちは確かにそれをやってのけている。Perfumeのライブは、これまで見たことのあるどんなものとも異なる。進化したモーションキャプチャー映像と複雑な透過性のスクリーンの配置を利用して、一曲一曲が容赦のない美を誇り、ダンスと音楽そのものをさらに引き上げている。
最先端のライブ演出の多くは2006年に真鍋大度(1mmのMVのディレクションも務めた)によって発足した実験的アート集団、Rhizomatiksの手によるものである。真鍋とは、彼の東京のスタジオで一時間ほど会うことが出来た。そしてそのインタビューのほとんどは、彼のMacBook Proに保存されている、現在進行中の衝撃的な作品の数々を見せてもらって過ぎて行った。
Rhizomatiksはあまりにも多数のプロジェクトを同時に手掛けているため、真鍋はプロジェクト間でテクノロジーがどうシェアされているかの経過を、300年後の東京の地下鉄マップのようなフローチャートで確認しなければいけない。RhizomatiksはPerfumeの振付師であり、ダンスカンパニーElevenplayの演出家でもある水野幹子と親しく仕事をしている。
「最初に物凄く実験的なプロジェクトをElevenplayでやってみて、もしその技術が上手く行ったらPerfumeでも使います」と真鍋は言う。
「リサーチと開発はElevenplay、より大きいスケールでの応用がPerfumeって感じです。Perfumeのライブでお客さんがたくさん入っている状況では絶対に失敗が出来ないので、その前に沢山テストを重ねます」
[Official Music Video] Perfume 「1mm」
Rhizomatiksのテクノロジーの多くは独自のものである。例えば、2014年大晦日のNHK中継では、彼らは自身でドローンを開発し、9個の点滅するランタンを、「Cling Cling」をパフォーマンスするPerfumeの3人の周りに飛ばした。
「充分に安全性が高いドローンが何処にも売ってなかったんです」と真鍋は説明する。
「普通のドローンを使用すると、ケガを招くのではという心配がありました。自分たちが開発したものは、人に当たってもドローン自体が壊れるだけなので、誰もケガをしないつくりになっています。バッテリーが3分しか持たないので商用にはならないですけど、ライブ演出にはいいものだと思います。普通に売っているドローンを使っていた間には沢山ケガがありましたから」
しかし今回のFuture Popツアーでは、Rhizomatiksは初めて一般用のガジェットを演出の一部に使用している。「Tiny Baby」という曲で、3人がそれぞれのマイクスタンドに取り付けたiPhone Xの前でパフォーマンスをする。3人の顔はステージ上にある大きなスクリーンに映し出され、iPhoneのTrueDepthカメラを用いて3人の口から言葉が飛び出すなど、様々なエフェクトを見せてくれる。視覚効果用のソフトウェアはRhizomatiksの2人のエンジニアが開発した。
「現時点で、顔認識テクノロジーとしてはiPhoneが一番安定してると思います」と真鍋。
「使いやすいしAPIも洗練されてる。ライブでは他に照明も沢山使うので、ただのRGBカメラだと安定しないんです」
驚いたことに、Perfumeの3人は自身のパフォーマンスについて常にすべてを分かっているわけではないという。
「実は演出が付いた状態での自分たちをまだ見ていないので、現時点では何とも言えないです」Future Popツアーで何か特に気に入った曲はあるか?という私の質問に対して、のっちはそう答えてくれた。
「実際に自分で見てないから想像でしかないけど、「Tiny Baby」かな」とかしゆか。
「振付が滅茶苦茶シンプルで、文字が私たちの口から飛び出てきて、お客さん達も見るのが楽しいと思います」
Perfume的には、一番大変な時間はステージに上がる前にも訪れるそうで、
「大度さんのおかげで楽が出来てると思います。私たちがやるべきことは振付を完ぺきにこなすだけ。そうしたら後のことは大度さんがやってくれるから」とのっちは語る。
「でもそういう演出を実現するために、振付の3Dビデオをグリーンバックに向かって何回も何回も録画するんです。それが大変」
「テクノロジーを実際の演出に加えることで、音楽とダンスをより私たちが魅せたいように表現できる」
Future Popツアー以外にも、Perfumeは米国でコーチェラでのパフォーマンスを行う。これは必要上、よりむき出しの演出になるだろう。記者がPerfumeを始めて観たのは2011年に大阪で行われたSummer Sonicでのことで、皆さんが想像する通り、ライブとは全く異なる経験だった。日光の下、セットチェンジの時間も限られている状況では出来ることはあまりない。
「フェスには私たちを知ってくれたばっかりの人とか、Perfumeを初めて見るような人たちも来ます。それでステージ上は私達だけなので、もう挑戦ですよね」とかしゆかは語る。
「テクノロジーを実際の演出に加えることで、音楽とダンスをより私たちが魅せたいように表現できるんです。テクノロジーはその手助けをしてくれます」
「フェスだともっと攻めた感じの、皆さんに私たちを知ってもらうためのステージになります」とあ~ちゃん。
「でも「Future Popツアー」みたいなライブだと、ライブの最後までお客さん達に楽しんでもらう責任があります。だからある意味ではリラックスも出来るけど、別の意味でプレッシャーも感じますね。でもそういうプレッシャーに打ち勝った時の満足感が凄くて、だらかライブをやめられんのんですね」
近未来的なイメージを持つPerfumeだが、メンバー3人の公共での存在感は、日本の芸能人の水準と比較して比較的控えめで、個人レベルではSNSも利用していない。
「事務所の方針です」と言って笑うのっちは、iPhone SEに機種変するまでスマホを使っていなかったという。
「そういうものに最初に手を出さなきゃいけない側の人たちなんですけど、そういうのが出来ないんですよね。どちらかというとプライベートの安全保護の意味が強いんですけど。アルバムとかそういうものに関する投稿をオフィシャルのPerfumeアカウントでするのは好きなんですけど、自分たちについての投稿はしないですね」
最も、最近ではTikTokのアカウントも始動し、スマホもiPhone XSに機種変したことは記載しておこう。かしゆかのデビューはiPhone 3Gで、日本においては非常に早い段階でのスタートと言える。
「そういうのに付いてくのが遅くて、例えば「え?携帯が顔認証するの?」とかそういうのがあるとビックリするんです」とのっち。
「でもなんとか付き合って行きます。世界がそういう風に動いてるんですもんね」
アルバムとして「Future Pop」は中田の初期の作品ほど音質的には革新的ではないが、それは世界規模でのEDMとエレクトロポップの流行という点から避けられないものなのかもしれない。しかし3人によれば、中田はこのアルバムをPerfumeのこれまでの究極的な反復として捉えているという。
「中田さんがタイトルとアイデアを考えてきてくれたんです」とかしゆかは語る。
「でも中田さんが言ってたのは、Perfumeのプロデュースを始めた時に人から私たちの音楽はフューチャーポップだ、って言われたらしくて。当時は中田さんは別に近未来的だとは思わなかったらしいです。まだほかにやることもあったし。でも今Perfumeとやって来たこと全部を振り返ってみると、確かにフューチャーポップだったしこのアルバムはその最終結果だ、って中田さんが実際に言ってくれたんです」
それを聴いたうえで当然浮かぶ質問、「ではPerfumeのフューチャーポップの未来とは何なのか?」
「中田さんしかわからないんじゃないですかね!?」とあ~ちゃん。
「中田さんの事を信じてるし、中田さんが導いてくれる所なら何処までも付いて行きます」とのっちも賛同する。
その一方で、真鍋は常にライブで使える新しいテクノロジーについて考えている。彼が特に興味を示しているのは(*)FMRI(機能的核磁気共鳴画像法)脳スキャンを介した映像の生成だが、そのアイデア自体はライブ会場よりも家庭の方が向いている、と真鍋も認めている。短期的には、5GネットワークがRhizomatiksにとってより直近の刺激的な課題である。
訳者注:FMRI→を参照 fMRI - Wikipedia
「一番期待してるのは、観客の携帯から映像をステージに送れる能力ですね」と真鍋は語る。
「SAYONARA国立っていうイベントを旧国立競技場でやったときに、観客に写真を撮ってもらってそれをサーバーに送ってもらい、その写真を使ってスタジアムの3Dモデルを構築するっていうのをやったんです。でもあれはリアルタイムではなく、wi-fiを通じて写真を送ってもらう必要があって、時間が掛かり過ぎました。もし5Gがあればカメラから画像を直接サーバーにリアルタイムで遅れて、瞬時に3Dモデルを使用できるんです」
これはRhizomatiksが近年すでに取り組んでいる技術である。電話何台かをケーブルで接続したものに過ぎないとはいえ、その技術のコンセプトのデモ映像を見せてもらうことが出来た。
少数のデバイスから圧縮した映像を送信する際にはwi-fiの使用も可能だが、そのような技術を人で満杯のアリーナで使用するならば5G無しには不可能だ、と彼は語る。
(インスタ内の英文の翻訳)
フィリップ・W・シラーと未来について話しました。
折角の機会なので、議論を深めるためにデモを幾つかお見せしました。
彼に刺激を受け、更なる高みを目指すやる気をもらいました。
このインタビューの数日前、真鍋のインスタグラムに彼とAppleの上級副社長、フィリップ・シラーが会談している写真がアップされていた。そこで、彼と何を話したのかを聞いてみた。
「AR関係についてざっくり話しただけです」と真鍋。
「あと、5Gネットワークを手にした時、AR技術も大きく変わります。なのでその未来についても話し合いました」
AppleはiPhone Xを使った「Tiny Baby」のパフォーマンスを知っているのだろうか?
「はい、僕が彼に見せました。気に入ってましたよ」
-翻訳以上-
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