読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Perfume 翻訳物置き場

自分が翻訳した、Perfume に関する記事の翻訳を置いていきます。意訳も多いので、誤訳等ありましてもご容赦下さい。

映画レビュー : We ARE Perfume -World Tour 3rd Document- by Patrick St. Michel

元記事

Film Review: WE ARE Perfume – WORLD TOUR 3rd DOCUMENT | Hello Asia!

 

―以下翻訳―

 

映画レビュー: We ARE Perfume -World Tour 3rd Document-

 

記:Patrick St. Michel

 

 2011年夏、初めて Perfume のライブを観た時の興奮は、未だに私の頭から離れない。

 

 この日本の3人組ポップグループは、東京近郊の展示場で毎年開催される音楽フェス、Summer Sonic に出演していた。ライブが始まる10分前、私は巨大な会場の真ん中で、何千人もの観衆達に囲まれていた。周囲にいたのは Perfume グッズを身にまとった古参軍団、ライブが始まるのを友人と楽しそうに待っている10代の少女達、皮肉にもPAから流れるポップソングに合わせて踊るモヒカンのパンク達。

 

 当時引っ越した日本の中部地方の小さな街をブラついている時に「Love The World」を聞いてからの2年間、Perfume は私の人生の一部だった。初めて出会った瞬間から、彼女達の過激なエレクトロポップは私の iPod のお気に入りリストに入っている。Perfume のおかげで、辛い時期も乗り越えることが出来た。Perfume は「新しい場所で上手くやっていく」ためのものでもあり、誰もが経験するであろう気持ちの落ち込みを乗り越える方法の一つでもあったのだ。彼女達は、当時の自分が何者で、そして何者になったかという上で非常に重要な存在だった。そしてそんな私は、10代で初めてライブに行った時以来の興奮で、巨大な会場の中で照明が落ちるのを待ちわびていた。

 

チャートのトップに君臨する J-POP グループが2014年に行ったワールドツアーのドキュメンタリー映画、「We ARE Perfume」で最も心を打つシーンは、私が2011年に体験し、それ以降ずっと私の中に残り続けている「抑圧されて来た興奮が解き放たれた瞬間」を捉えたものだ。

ロサンゼルスの Hollywood Palladium で彼女達が初めてアメリカでライブを行う何時間も前、カメラは会場の外で列を作っているファン達に注目する。幾つかの短いインタビューでは、切れめのない行列に並ぶファン達が彼らがどれだけ長い間ライブを観れるのを待ち望んでいたか、Perfume が彼らにとってどんな存在なのか語ってくれている。1人の女性は、自身が辛い時期を乗り越える上で Perfume の常に前向きな音楽が果たした役割について語る際、涙を流していた。

 「何かのファンであること」への感情のほとばしりに焦点を絞った、このようなシーンの数々こそが、「We ARE Perfume」という映画の中で最も突出した瞬間であり、 Perfume ファン界隈への最高の祝福であり、ファン達自身へのプレゼントだと言えるだろう。

 

 しかし、表面上この「We ARE Perfume」という映画は、彼女達の台湾、シンガポール、イギリス、アメリカへの旅をシンプルに、その後半に焦点を当ててドキュメンタリーを作っているように見える作りの、WORLD TOUR 3rd DOCUMENTの副題通りの作品となっている。他のドキュメンタリー映画同様、観客達は最初、かしゆか、あ~ちゃん、のっち(樫野有香西脇綾香大本彩乃)の3人が、ツアーに向けた準備をし、各地へ旅立つ様子を見ることとなる。各都市を巡る3人の足取りに、ライブ映像、メンバーへのインタビューやこれまでの道程などがちりばめられ、映像は進む。

 

 これらの映像殆どから、この10年で日本トップのポップグループに登り詰めたチームの内側を垣間見ることが出来る。3度目となったワールドツアーの裏側…今後のセットリストへの変更を決めるライブ後の駄目出し会、リハーサル、集中を高めるための3人のルーティーン…は観ていて興味深い。しかし、国内、海外のファン達両方にとってのご褒美となるのは、オフの日に街を散策する Perfume の姿なのではないだろうか。数多の音楽ドキュメンタリー同様、グループが普段見せない側面を覗き見るチャンスであり、この映画でも各地の観光スポットを訪れる姿や、南カリフォルニアのハンバーガーチェーン、In-N-Out についてマニアックな会話を交わすシーンが並んでおり、とても可愛らしい。

 

 このような細かいディテールの数々は、ファン達が食いつく所だろう。しかし、「We ARE Perfume」を Perfume について何も知識が無い人の視点から観ると、いくつかの欠点も見えてくる。全体に散りばめられたインタビューで、3人のこれまでの歴史が簡単に明かされているとはいえ、その量は控えめで、Perfume ファン以外に「何故このツアーが彼女達にとって大切なのか」については明かされない。

 

 それはちょっともったいない事なのかもしれない。Perfume には、近年の J-POP グループの中では、最も人を引き付ける歴史があるのだから。20世紀末に広島で結成されたこのグループは、キャリアのしばらくを無名で過ごし、振るわないセールスが原因で、解散の危機に立たされたことさえある。しかし、解散前最後に、と出したシングルが影響力のあるラジオパーソナリティー達によってラジオで流されて露出が増え、Perfume は日本のポップグループのトップに立つまでに咲き誇ったのだ。

 

 このことについては言及こそされているが、あくまでも「これも一応言っときますね」的な扱いである。ただ、ファン達は当然こんなことは承知だし、この「We ARE Perfume」は「もう既に列車に乗ってるヤツら」向けの記念作品として観た時に、究極の輝きを放つ。

 このドキュメンタリー映画を私が観賞したのは、東京国際映画祭でのことだったが、風の強い土曜の朝、劇場に集まったのはそんな Perfume ファン達で、そのうちの何人かはロゴ入りのタオルまで持って来ていた。私を挟んで座った2人は劇中何度か泣いていたし、他の観客達も似たようなものだったろう。

 

 「We ARE Perfume」は、興味のない人へ Perfume を魅力的に紹介する、という作りではないかもしれないが、ファンとアーティストの関係を巡る冒険としては非常によく出来ている。

 「何かのファンである」ということは、外部から見ると奇妙に見えるものだ。近年、ファン達に愛されるアーティスト達(One Direction や、ジャスティン・ビーバーケイティ・ペリー等)のこれまでのキャリアとライブの裏側とライブ映像をまとめたドキュメンタリー映画が多数上映されている。

 上に述べたようなアーティスト達は、賞賛と同じぐらい嘲りの対象にもなる存在であるし、映画を観たからと言ってアンチがファンになることは無い。ただし、この種の映画の一番の見どころは、ファンにとってそのアーティストがどういう存在なのか、について語られる瞬間であり、立場が入れ替わり、アーティスト達がファン達に感動させられる瞬間である。

 

 その意味で「We ARE Perfume」は間違いなく、One Direction の「This Is Us」やジャスティン・ビーバーの「Believe」と同系統の作品である。ツアーで訪れた全ての国の様子について触れているとはいえ、この映画が重点を置いているのは Perfume のアメリカのLA と NY 、すなわち Perfume がこれまでライブを行った事が無い都市、への旅の様子である。(今年の SXSW で披露された、眩暈がするようなパフォーマンス(映画冒頭にイントロとして差し込まれたボーナスとして機能している)を含む)

 そしてこの2都市は、今回のツアー中で Perfume に会えることに対して最もファン達が興奮していた都市でもあった。

 

 ファン達へのインタビュー(もの凄く早い時間から行列を作って待ってるような人達への)は手短だが記憶に残るもので、彼ら個人にとってどれほど Perfume が大切なのか、そして敬愛するグループのライブを初めて観る前独特の、眩暈がするような感情を捉えている。そして同時に、ファン集団を形作る重要な要素である、共通のものに向けて様々なバックグラウンドを持ったファン達が1つになる力も描き出している。

 

 そして、その逆もしかり。オフの日に、3人がわちゃわちゃやっているのを見るのは素晴らしいファンサービスだが、同時にこの手のドキュメンタリー映画につきものの疑問も湧いてくる。

 カメラが回ってる中で、完全に素の自分を見せれているのだろうか?という疑問だ。ただ、ライブ前のミート&グリードでファンと交流する姿や、ライブ後にステージ裏で観客達の歌声を聴く姿を見る限り、3人は自然に振る舞っているようであり、何よりも起きている事態の大きさは3人を圧倒する。

 

 3人のこれまでの歴史や文脈を付け加えることで、あまり Perfume を知らない一般の観客にもより分かりやすくはなったかも知れない。特に、 J-POP グループがアメリカでライブを開催するのが如何にレアなことかという点や、Perfume がどのようにして(自ら積極的に動いたわけでもないのに)アメリカでファンベースを作り上げて来たのか、についてはより理解しやすいものにはなっていただろう。

 だがファン目線で見ると、Perfume がこれまで日本のアーティスト達のごく少数しか成し遂げなかったことをやってのけた、というのを目の当たりにするだけで、十分に5億点なのである。

 

 「We ARE Perfume」はその名の通り、Perfume にとって自身のキャリアで最も記憶に残る瞬間の1つを収めたドキュメンタリーだ。

 この映画で新参をこちら側に引き込むことは出来ないとは思う(そういう奴らにはまず、黙って曲を聞かせればいいんだし)。ただ、ファン向けの映画としては非常によく機能する。

 

 だが、この映画が最も素晴らしいのは、大好きなアーティストを生で見た時の雷に撃たれたような感覚と、ファンである事の大切さを思い出させてくれることなのだ。

 

―訳以上―